走行距離課税はいつから日本で議論された?導入している国と合わせて解説

走行距離課税とは、自動車がどれだけ走行したかという距離に応じて税金を負担する仕組みです。
2025年12月には、ガソリン税の暫定税率が廃止されました。代わりの財源として、走行距離課税の必要性が改めて注目されています。
ガソリン税収の減少を背景に「いつから議論されているのか?」「どんなメリットやデメリットがあるのか?」といった点が関心を集めています。
すでに導入している国の事例もあり、日本でも将来の選択肢として検討が進むかもしれません。
また走行距離課税は、課税額をどうやって調べるのかという仕組みも重要です。走行距離課税を導入するとなると、車載器やオドメーターなど複数の方法が議論されることになるでしょう。
今回の記事では、走行距離課税の概要やメリット・デメリット、既に導入している国の事例について解説していきます。
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目次
走行距離課税とは?

走行距離課税は、車がどれだけ走ったかに応じて税額が決まる課税方式です。2025年12月に、ガソリン税の暫定税率が廃止されました。
道路の維持管理には、安定した財源が必要です。そこで、ガソリン税の暫定税率に代わる、走行距離という「道路の使い方」に着目した、新しい税金の導入が注目されています。
ただし、走行した分だけ税負担をするという考え方は、地方在住者や長距離移動が多い人への影響が大きくなり、慎重な検討が求められています。
実際の距離計測には、車載機器や点検時のメーター確認などが想定され、プライバシーへの配慮も議論の対象です。
走行距離課税はいつから日本で議論されているのか?
走行距離課税が日本で本格的に話題に上り始めたのは、電気自動車の普及が進み、ガソリン税収の減少が懸念されるようになった2018年からとされています。
つまり、ガソリン税の暫定税率廃止がきっかけではなく、電気自動車の普及によりガソリン税の減収が議論の要因です。また、若者の車離れも税収減に影響していると言われています。
燃料に依存した税体系では、将来の道路維持費をまかなえない可能性が指摘されています。そこで代替案の一つとして、走行距離に応じて負担する方式が検討されてきました。
2020年代に入ると議論はさらに活発化し、マスコミにもニュースとして取り上げられるようになってきています。
政府の会議資料や専門家の提言でも、具体的な制度設計が取り上げられるようになり、将来の税制改革の候補として注目度が高まっています。
走行距離課税を導入するメリット
走行距離課税を導入するメリットは、安定した税収が見込めたり、走行距離の短い人が得をしたりすることです。
- 安定した税収が見込める
- 走行距離の短い人が得をする
- 排気量別の自動車税が撤廃される可能性がある
安定した税収が見込める
走行距離課税の大きなメリットとして、道路整備に必要な税収を安定して確保できる点が挙げられます。
ガソリン税の暫定税率が廃止されたことにより、財源の不足が指摘されています。
走行距離に応じて課税する方式であれば、道路を利用した分だけ確実に財源を確保することが可能です。
そのため、将来の交通インフラを維持するための持続的な仕組みとして注目されており、税収の不安定化を防ぐ手段として期待されています。
走行距離の短い人が得をする
走行距離課税は、あまり車を使わない人にとって負担が軽くなる点がメリットです。
現在の自動車税は、走行距離に関係なく一律で課されます。距離に応じて税額が決まる仕組みになれば、週末の買い物程度しか運転しない人や、短距離移動が中心の家庭は支払う税金が抑えられるでしょう。
車を所有していても利用頻度が低い人にとっては、実際の使い方に見合った公平な負担となり、家計の節約にもつながる制度として期待されています。
排気量別の自動車税が撤廃される可能性がある
走行距離課税が導入されると、現在のように排気量によって自動車税額が決まる仕組みが見直される可能性があります。
排気量課税はエンジンの大きさで負担が変わるため、実際の走行量と税金が必ずしも一致しない点が課題とされてきました。
走行距離に応じて税額を決める方式に移行すれば、エンジンの大きさに関係なく「どれだけ道路を使ったか」で負担が決まるため、税体系がよりシンプルで公平になると期待されています。
これにより、大排気量車でも走行距離が短ければ負担が軽くなる可能性があります。
走行距離課税を導入するデメリット
走行距離課税を導入するデメリットは、物価高騰を招く恐れがあったり、地方在住者の負担が増えたりすることです。
- 物価高騰を招く恐れがある
- 地方在住者の負担が増える
- バスやレンタカーの料金が高くなる可能性がある
- 導入コストや運用コスト、プライバシー侵害の問題がある
物価高騰を招く恐れがある
走行距離課税が導入されると、物流業者や営業車など走行距離の多い事業者の負担が増える可能性があります。
運送コストが上昇すれば、その影響は商品価格に転嫁されやすく、食品や日用品など身近な商品の値上がりは避けられません。
特に地方では車移動が生活の中心となるため、事業者だけでなく地域全体の物価に波及する可能性が指摘されています。
地方在住者の負担が増える
走行距離課税が導入されると、日常的に長距離移動が欠かせない地方在住者の負担が大きくなる可能性があります。
都市部と違い、公共交通機関が十分に整っていない地域では、通勤や買い物、通院などあらゆる場面で車が必須です。
そのため走行距離が自然と伸びやすく、結果として税額も高くなりやすい点が懸念されています。
生活に必要な移動が多いだけで負担が増える仕組みは、地域間の不公平感を生む恐れがあり、制度設計の大きな課題とされています。
バスやレンタカーの料金が高くなる可能性がある
走行距離課税が導入されると、長距離を走ることが多いバス会社やレンタカー事業者のコストが増える可能性があります。
これらの車両は一日に数百キロ走ることも珍しくなく、走行距離に応じて税額が上乗せされれば、運営側への負担は大きいです。
結果として、その追加コストが運賃やレンタル料金に反映され、利用者が支払う金額が上昇する恐れがあります。
特に観光地や地方では移動手段としてバスやレンタカーの需要が高いため、地域経済への影響も懸念されています。
導入コストや運用コスト、プライバシー侵害の問題がある
走行距離課税を実施するには、全車両にGPSや専用の車載器を取り付けて走行距離を計測する仕組みが必要です。そのため、その導入コストが大きな課題になります。
機器の設置費用だけでなく、データを管理・運用するためのシステム維持費も継続的に発生します。
また、走行履歴が詳細に記録されることで、個人の移動情報が外部に漏れるリスクが指摘されており、プライバシー保護の観点からも慎重な検討が求められています。
仕組み|走行距離課税はどうやって調べるのか?

走行距離課税の徴収方法として、車載器の設置やオドメーター(走行距離計)の活用が挙げられます。
車載器の設置
走行距離課税の仕組みとして有力視されているのが、車に専用の車載器を取り付けて走行距離を自動的に記録する方法です。
この車載器には、GPS機能や通信機能が備わっています。これらのシステムにより、どれだけ走ったかを正確に把握し、必要に応じてデータを送信できるようにする仕組みが想定されています。
従来のメーター確認だけでは、不正防止が難しいです。そのため、最新の機器による自動計測が重要とされており、制度を運用するうえで欠かせない技術として議論が進んでいます。
ただし、デメリットの項目でも解説した通り、導入コストやシステム維持費がかかるのが課題です。
オドメーター(走行距離計)の活用
走行距離課税の方法として、現実的とされているのが、車に標準装備されているオドメーター(走行距離計)の活用です。
オドメーターは走った距離を常に記録しているため、新たな機器を取り付けなくても課税に必要な数値を把握できます。
具体的には、車検や定期点検の際にメーター値を確認し、その差分から課税対象となる走行距離を算出する仕組みです。
導入コストを抑えられる点が大きな利点ですが、不正防止のための管理方法も併せて検討が進められています。
走行距離課税を導入している国はあるのか?

走行距離課税を導入している国は、アメリカのオレゴン州やニュージーランド、EU加盟国が挙げられます。
・アメリカ(オレゴン州)
・ニュージーランド
・EU加盟国(ドイツ、オーストリア、ポーランドなど)
こちらでは、走行距離課税を導入している国の事例について解説していきます。
アメリカ(オレゴン州)
アメリカでは、オレゴン州が走行距離課税の先進的な取り組みで知られています。
オレゴン州ではガソリン税収の減少に対応するため、実際に走った距離に応じて課税する「OReGO」という制度を、2015年に導入しました。
参加者は車載器やGPSを利用して走行距離を記録し、そのデータをもとに税額を算出します。
出典:令和4年度高度な自動走行・MaaS 等の 社会実装に向けた研究開発・実証事業 (CASE等による産業構造)|経済産業省
ニュージーランド
ニュージーランドでは、ディーゼル車や電気自動車など燃料税が課されない車種を対象に、走行距離に応じて税金を支払う制度が導入されています。
料金形態は、車両のタイプとその積載重量に応じて設定されています。1,000km単位で事前にライセンスを購入するか、専用車載器でRUC(Road User Charges)ライセンスを管理する仕組みです。
ニュージーランドの制度は、道路の使用頻度に応じて利用者が負担するという公平な仕組みで、特別な機器を取り付ける必要がありません。
そのため、道路インフラの維持費を効率的にまかなうモデルとして定着しており、比較的シンプルに運用されているのが特徴です。
出典:欧州における走行距離課金の導入及び検討状況│公益財団法人高速道路調査会
EU加盟国(ドイツ、オーストリア、ポーランドなど)
EUでは複数の国が走行距離に応じた課金制度を導入しており、特にドイツは代表的な事例として知られています。
EUでは1993年の発足以降、域内の物流が自由化され、輸送トラックの国境を超えた長距離移動が容易になりました。
しかし、国によっては有料道路制度がなかったため、負担額に不公平が生じたとのことです。
このような背景から、道路インフラへの課金ルールを制定し、走行距離課税の導入へとつながりました。
主に重量貨物車への課税を開始しており、現在ではEU加盟各国の走行距離課税導入が促進されています。
たとえばドイツでは、当初は12トン以上のトラックが対象車両でしたが、2015年10月からは7.5トン以上の車両が課税対象になっています。
走行距離課税の徴収方法は、GPSを利用して走行距離を記録し、課税額を算出する仕組みです。
ドイツの走行距離課税のシステムは、道路の維持管理費の確保に貢献していると評価されています。その一方、物流コストの増加につながっているという指摘もあります。
2025年現在、EU加盟国で走行距離課税を導入している国は、次の通りです。
- ドイツ
- オーストリア
- ポーランド
- チェコ
- スロバキア
- ハンガリー
- ベルギー
- ブルガリア
- スロベニア
出典:欧州における走行距離課金の導入及び検討状況│公益財団法人高速道路調査会
日本でも走行距離課税が導入される日は来るのか?
安定した財源を確保するという意味では、日本でも走行距離課税が導入される日が来る可能性は否定できません。
ちなみに走行距離課税の導入については、片山さつき財務大臣が、2025年11月12日の国会答弁で否定をしています。
しかし、ガソリン税の暫定税率が廃止され、2025年12月18日には自民党と国民民主党の間で、自動車購入時の「環境性能割」課税廃止に関する合意がされました。
自動車に関する税収が減るなか、自動車に関する大幅な税制改革が進むうちに、走行距離課税が導入される可能性は十分にあるでしょう。
走行距離課税についてのまとめ
- 走行距離課税とは、車の走行距離に応じて税額が決まる課税方式
- 安定した税収が見込めたり、排気量別の自動車税が撤廃される可能性があったりするのがメリット
- 物価高騰を招く恐れがあり、地方在住者の負担が増える可能性があるなどデメリットも指摘されている
走行距離課税は、走行距離に応じて負担を決めるというシンプルな仕組みです。
税収の安定化や公平性の向上といったメリット、そして地方在住者の負担増や導入コストなどのデメリットも併せ持つ制度です。
海外の事例や日本での議論の経緯を踏まえると、今後の自動車税制を考えるうえで避けて通れないテーマと言えるでしょう。
この記事の監修者
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DUKS 府中店 営業事務
吹浦 翔太
業務歴12年、現場での職務経験6年を経て今はお客様窓口の受注業務を担当しています。
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