過労運転とは?定義や判定基準、居眠運転との違いを解説

雑学

過労運転とは、運転者が過労や体調不良によって、正常な運転ができない状態で車を走らせてしまう行為を指し、重大事故の大きな原因となります。

夜勤明けの疲労や長時間労働など、誰にでも起こり得る状況が背景にあるため、特別な職業に限られた問題ではありません。

法律上の基準や違反点数も厳しく、過労運転は居眠り運転との違いについても正しく理解する必要があります。

過去の事例を見ても、わずかな体調の乱れが取り返しのつかない事故につながることが分かります。

今回の記事では、過労運転の定義から罰則、過去の事例を詳しく解説していきます。

過労運転とは?定義を法律から解説

過労運転とは過労や病気、薬物の影響その他の理由により、正常な判断ができない状態で運転することです。

道路交通法・第66条では、過労運転について次のように記載されています。

道路交通法・第66条(過労運転等の禁止)

何人も、前条第一項に規定する場合のほか、過労、病気、薬物の影響その他の理由により、正常な運転ができないおそれがある状態で車両等を運転してはならない。

引用:道路交通法 | e-Gov 法令検索

これらの条件を一つでも満たしている状態で車を運転した場合、罰則の対象となります。

過労運転の要因

過労運転の要因

過労運転の要因は、次の4つです。

  • 過労(長時間労働など)
  • 病気(体調不良など)
  • 薬物の影響(薬の副作用など)
  • その他(ストレスなど)

こちらでは過労運転の要因について、詳しく解説していきます。

過労(長時間労働など)

過密な勤務や睡眠不足が続くと、集中力や判断力が大きく落ち「過労」の状態になります。

過労のまま運転すると、危険に気づくまでの時間が遅れやすくなり、事故を起こす恐れがあります。

長時間労働や、休憩の不足は体力だけでなく脳の働きも低下させ、本人が自覚しないまま反応が鈍るので運転しないようにしましょう。

こうした疲労の蓄積が過労運転の大きな要因となり、事故リスクを高めてしまいます。

病気(体調不良など)

体調不良や持病の悪化によって注意力が落ちたり、急な眠気やめまいが起きたりすると、運転中の判断が遅れやすくなります。

睡眠時無呼吸症候群や、糖尿病などは自覚しにくい症状が出ることもあり、本人が気付かないまま運転能力が低下する危険があります。

病気による体調の変動は、過労と同様に事故リスクを高める要因となります。

薬物の影響(薬の副作用など)

一部の薬は眠気や注意力の低下を引き起こし、運転中の反応速度を大きく鈍らせます。

風邪薬や睡眠導入剤など、日常的に使われるものでも影響が出ることがあります。過労による疲労と重なると、危険性がさらに高まります。

薬の作用を正しく理解せずに運転すると、本人が思う以上に判断力が落ち、事故につながるリスクが増します。

その他(ストレスなど)

精神的なストレスや緊張が続くと、集中力が途切れやすくなり、注意すべき場面で反応が遅れることがあります。

仕事のプレッシャーや人間関係の悩みなどが積み重なると、体力が残っていても判断力が落ち、過労と同様に安全な運転が難しくなります。

心身の負担が蓄積すると、わずかなミスが事故につながる危険が高まります。

過労運転の判定基準とは?

過労運転の明確な数値や基準は、道路交通法でも定められていません。

たとえば飲酒運転の場合は、息を吐いてアルコール濃度を調べます。しかし、過労運転には具体的な数値、基準はないのです。

反対にいえば疲労や眠気、体調不良など、集中力に関わる事柄ならば、過労運転と見なされるでしょう。

少しでも体調に不安がある場合は、運転をしないのが懸命です。過労や病気のまま運転すると事故の危険性が高くなり、取り返しのつかない事態になる恐れがあります。

ちなみに、トラックやバスの運転手など職業ドライバーの場合は、1日の拘束時間や休息時間が明確に決められています。

職業ドライバーの場合は、労働時間や休憩時間を守らずに過労運転で事故を起こすと、ドライバーはもちろんのこと、会社や管理者の責任も問われます。

過労運転の罰則

過労運転の罰則は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金です。さらに違反点数は25点なので、一発で免許取り消しとなります。

刑事処分3年以下の懲役または50万円以下の罰金
違反点数25点
行政処分免許取り消し
(欠格期間2年)

出典:交通違反の点数一覧表|警視庁

刑事処分と違反点数は、酒気帯び運転(呼気1リットル中のアルコール濃度0.25ミリグラム以上)と同等です。

過労運転と見なされると、事故を起こしていなくても一発で免許取り消しなので気を付けましょう。

過労運転の事例

過労運転の事例、判例

こちらでは、実際に起こった過労運転の事例や判例について紹介します。

八本松トンネル事故(2016年3月)

八本松トンネル事故は2016年3月、山陽自動車道下り「八本松トンネル」の渋滞列に、トラックが突っ込み、多重衝突と火災が発生した重大事故です。

ドライバーは慢性的な睡眠不足の状態で、事故の危険性と運転を差し控えるべきことを認識していたにもかかわらず、中型トラックを運転していました。

その結果「過労運転」となり、渋滞の車列に突っ込んで車5台を炎上、トンネル内に黒煙を充満させて2人を死亡、8人に煙を吸うなどの怪我をさせています。

裁判では、ドライバーに懲役4年の実刑判決、運行管理者には「過労運転下命罪」で懲役1年6ヶ月、執行猶予3年の判決が下りました。

出典:トラック運転手の男に懲役4年の有罪判決 広島県東広島市の山陽道トンネル事故|産経ニュース

東名高速道路豊橋事故(2011年)

東名高速道路豊橋事故は2011年2月、渋滞していた車列の最後尾に中型トラックが高速のまま突っ込み、多重衝突へ発展した重大事故です。

後部座席にいた高校生の男女2名とその母親の計3名が死亡し、ほか7名が重軽傷を負いました。

調査では、ドライバーが月400時間を超える長時間労働を続けており、強い疲労による居眠り運転状態だったと認定されています。

裁判では、ドライバーに懲役5年4か月の実刑判決、さらに会社と運行管理者には「労働基準法違反(長時間労働)罪」で、それぞれ罰金30万円の略式命令が出されました。

出典:東名3人死亡事故、トラック運転手に禁錮5年4月|日本経済新聞

過労運転の前兆を紹介

過労運転の事例

過労の兆候は「注意力の低下」「疲労感の増大」「眠気」と言われています。次の兆候を感じる場合、運転をセーブして体調の回復に努めてください。

運転時に現れる過労の具体的兆候

・あくびが出る
・1回あたりのまばたきが長くなる
・目をしょぼしょぼさせ、こする
・車のスピードが遅くなったり早くなったりする
・車が蛇行するようになる

・・・など

身体的に現れる過労の具体的兆候

・目が疲れる、痛くなる
・まぶたがピクピクする
・体や足がだるくなる
・腰が痛くなる
・肩や首筋がこる
・腕や手首が痛くなる

・・・など

出典:トラック輸送の過労運転防止対策マニュアル|国土交通省

どうすれば過労運転を防げるのか?

過労運転を防ぐには、日常と運転中において、それぞれの体調管理が重要です。

日常の体調管理

日常的に体調を整えることは、過労運転を防ぐうえで最も基本的で効果的な対策です。

  • 6〜7時間の連続した睡眠を確保する
  • 就寝前のスマートフォンの使用や飲酒は避ける
  • 過度なトレーニングや運動は避ける

まずは、毎日6〜7時間の連続した睡眠を確保し、脳と身体の疲れをしっかり回復させてください。

就寝前のスマートフォンの使用や飲酒は眠りの質を下げ、翌日の集中力低下につながるためできるだけ避けましょう。

また、健康維持のための運動は有効ですが、過度なトレーニングは逆に疲労を蓄積させ、運転時の判断力を鈍らせる原因になります。

自分の体調の変化に敏感になり、無理を感じたら運転を控える姿勢が安全につながります。

運転中の体調管理

  • 長時間運転の際は休憩時間や場所など、走行計画を立てる
  • 疲れる前に休憩をとる
  • 強い緊張を伴い疲労の要因となるため、無謀な運転は避ける

長時間の運転では、事前に休憩時間や休憩場所を含めた走行計画を立てておくことが体調維持に大きく役立ちます。

疲れを強く感じてから休むのでは遅く、少しでも集中力が落ちる前に早めの休憩を入れるようにしましょう。

また、スピードの出し過ぎや車間を詰めるような無謀な運転は強い緊張を生み、心身の疲労を急速に高めてしまいます。

自分の体調の変化に敏感になり、無理を感じたら迷わず運転を中断する姿勢が、過労運転を防ぐためには欠かせません。

過労運転と居眠り運転の違いは?

疲労の蓄積による過労は、運転中に睡眠を誘発するため「居眠り運転」と同じだと思いがちです。

しかし、道路交通法に「居眠り運転」という規定はなく、基本的には道路交通法・第70条「安全運転の義務」に対する違反として扱われます。

道路交通法・第70条

(安全運転の義務)

車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。

引用:道路交通法 | e-Gov 法令検索

安全運転義務違反の罰則は、次の通りです。

刑事処分3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金
(※反則金を払わなかった場合)
違反点数2点
行政処分反則金9,000円
(※普通自動車の場合)

出典:交通違反の点数一覧表|警視庁

過労運転の罰則と比較すると、明らかに軽微です。

ただし居眠り運転でも、長時間労働による疲労や、薬物の副作用によるものだと見なされると、過労運転になる可能性があるので気を付けてください。

過労運転についてのまとめ

  • 過労運転とは、過労・病気・薬物などに影響により、正常な判断ができない状態で運転すること
  • 過労運転の罰則は、一発で免許取り消しになるなど、酒気帯び運転と同等に重い
  • 過労運転を防ぐには、日常と運転中において、それぞれ体調管理が大切

過労運転は、夜勤明けの疲労や長時間労働など、誰にでも起こり得る体調の乱れが事故につながる危険な行為です。

基準が数値化されていないからこそ、自分の状態を正しく把握し、無理をせず運転を控える判断が重要になります。

過去の事例からも分かるように、過労や体調不良は重大事故の引き金になります。今回の記事で解説した防止策を意識し、安全な運転につなげてください。

この記事の監修者

GlassD吹浦先生

DUKS  府中店 営業事務

吹浦 翔太

業務歴12年、現場での職務経験6年を経て今はお客様窓口の受注業務を担当しています。
現場で培った経験を活かしお客様に最善な修理をご案内しております。

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