プロに聞いた!車のガラスの応急処置に「補修キット」がオススメできない理由・ベストな処置方法

フロントガラスを始め、カーガラスが破損してしまったとき、様々な処置の方法がありますよね。その中でも「補修(修理)キット」は頼りたくなるアイテムです。
しかし、ガラスリペアのプロは「ガラス破損の応急処置に、補修キットは使わないほうがよい」と断言します。
その理由とは一体、どのようなものなのでしょうか?
今回は、glassD府中店・吹浦翔太さんご協力のもと、補修キットを使わないほうがいい理由について解説していきます!
目次
プロに聞いた!「補修キット」を使わないほうがいいワケって?
━━ ガラスリペアのプロから見て、「補修(修理)キット」を使用しないほうがいい理由とはどのようなところにあるのでしょうか?
ガラスに飛び石などによる傷ができた場合、損傷場所にもよりますが、100円以内の大きさの傷なら補修できる可能性が高くなります。
修理は「レジン液」という、紫外線で硬化する、少しドロッとした粘度の高い溶剤を使用して修理していきます。
キズの内部というのは大変細くなっており、このレジン液が浸透するのには時間がかかります。
そのため、個人で修理するとレジン液がしっかり入っていないまま固まってしまうことがほとんどです。
こうなるとプロの私たちでも再修理が難しく、ガラス交換にせざるを得ない場合もあるのです。
また、修理が不完全の状態だと車検も通らなくなる可能性が高くなります。「手軽に直せるから」と、市販の補修キットで修理すると、かえって高くつく場合も多々あるのです。
リペア修理でしたら、ガラス専門店やディーラーに依頼しても、約1万円〜2万円で修理することが出来ます。
ご自身で修理される前に、ガラス専門店や、ディーラーで一度見てもらうようにしてください。
補修キット以外の処置方法
無理に自分で対処してしまうと、車検に通らなくなってしまったり、ガラスごと交換しなければならなくなってしまったりと、デメリットのほうが圧倒的に大きいようです。
補修キットを使わないほうが良いとなると、「具体的にどうすれば良いの?」と疑問に思いますよね。
まずはプロにいち早く相談することが先決ですが、プロに修理をしてもらうまでのあいだにも、自分でできることはいくつかあります。
そこで、補修キット以外での処置を行う際、「絶対にやっておいたほうがいいこと」・「絶対にやってはいけないこと」をそれぞれプロに伺ってみました。
【絶対にやっておいたほうがいいこと】
━━ 補修(リペア)キット以外で傷の処置をするとき、「絶対にやっておいたほうがいいこと」はありますか?
まず大前提として、傷の中を綺麗にしておくことが重要です。
雨の水などが傷の内部に入りこんでしまうと、傷に汚れが溜まり、修理の仕上がりや修理後の強度に大きな差が出てしまいます。
キズができたらすぐに修理を依頼する、が最もベストな選択です。
もしも難しい場合は、セロファンテープなどの透明なテープで傷を覆い、水が入らないようにしてください。
【絶対にやってはいけないこと】
━━ 反対に、「絶対にやってはいけないこと」はありますか?
絶対にやってはいけないこととしては、
- 傷に瞬間接着剤を流し込むこと
- 傷ができてから撥水をかけること
このふたつが挙げられます。
瞬間接着剤や撥水の溶剤が傷に浸透してしまい、修理をしようとしても補修剤が傷に入らなくなってしまいます。
そうなってしまった場合は修理が不可となり、修理ではなくガラス交換になる場合もあるので絶対にやらないようにしてください。
ガラスリペアのプロ直伝!応急処置の基本
ガラスに傷ができてしまった時の応急処置の基本は、「傷ができてしまったらすぐにテープ等で傷を覆い、微細な汚れやホコリ、水が傷の内部に入りこまないようにすること」です。
小さな傷だからと放置したり、後回しにしてしまうと走行中の振動によって傷やヒビが拡大してしまう危険性が高くなってしまうので、できるだけ早めに傷を保護するようにしてください。
ガラスに傷ができてしまった時の応急処置については、以下の記事で詳しく解説しています。
実際にプロがやっている「ガラスリペア」
①リペア修理可能な傷

周りの黒い部分(セラミック)から上と左右は10cm、下は20cm以上離れていて、100円玉以内の傷なら修理できる可能性が高いと言えます。

②ガラス傷の修理に使うもの
画像左:レジン液(傷に浸透させる液体。透明なものとグリーンの物を車に合わせて使い分ける)
画像中央:インジェクター(レジン液を傷に浸透させるためのもの)
画像中央手前:UVライト(レジン液を凝固させるためのもの)
画像右:ドリル(傷の形を整えるためのもの)
③ 下準備
傷の修理に着手する前に、ガラス傷のコンディションを整えておく必要があります。

まず、傷周りの汚れや撥水をコンパウンドを用いて綺麗に落とします。

次にドリルで表面の傷を綺麗に丸く整え、2mmほどの深さの穴を開けます。

傷の状態が整うと、このような感じになります。

④インジェクターでレジン液を傷に浸透させる
画像のインジェクターをとレジン液を使用し、加圧と吸引を繰り返し時間をかけて少しずつ傷の中にレジン液を浸透させていきます。



表面の穴をしっかりレジン液で埋めます。
ピット液にフィルムを被せ、平らにします。

⑤UVライトでレジン液を固めていく
レジン液が完全に傷に浸透したら、UVライトを使用して固めます。


レザーブレードを使って不要な部分を削っていきます。


⑤仕上げ
最後に極めの細かいコンパウンドで磨いていきます。


仕上げピットで透明感を出せば完了です。
完了時はこのような仕上がりになります。

より詳しいリペア修理については、以下の記事でご紹介しています!
補修キット以外で応急処置を施したあとは
━━ 応急処置がうまく終わっても「もう大丈夫」とそのままにするのではなく、やはり一度はリペアショップに相談するべきでしょうか?
プロの私たちでも、ガラスの強度を100%の状態に戻すことは不可能です。
自身で修理される前に、必ずディーラーやガラスの専門店に相談することをお勧めします。
もしも自身で修理されて、修理箇所が心配な場合は、ぜひご相談ください。

━━ 相談する場合(お店にもよるかとは思いますが)、料金などは発生するのでしょうか?
弊社は相談や傷の確認のみの場合でも対応させて頂いています。また、見積もりも無料で行っております。
料金は修理の際にのみ頂いておりますので、安心してご来店ください。
最後に
今回は、glassD府中店・吹浦翔太さんご協力のもと、補修キットがオススメできない理由についてご紹介しました。
車は、日常生活においてとても重要なものです。傷やひび割れなどのトラブルに遭遇したとき、「できるだけ修理にかけるコストを抑えたい」という気持ちは誰しもが持つものです。
すばやく直せるからといって全て自力で対処しようとすると、最後には修理費が高くついてしまうケースは少なくありません。
だからこそ、修理のプロにいち早く相談することが、最短かつローコストに抑えられる最善の選択であると言えます。