車が冠水・水没したらどうすればいい?対処法・解決方法を解説

近年では、毎年のように台風やゲリラ豪雨による水害が多く見られるようになりました。自然災害で車が大きな被害に遭うのは、主に台風や豪雨による冠水・浸水被害です。
車の冠水や浸水は自分の身にそうそう降りかかることではない、と思っていても、日本は台風をはじめとする自然災害が多く発生するため、絶対に水害に遭わないとは言い切れません。
今回の記事では、車が冠水・水没してしまったときの解決方法をご紹介していきます。いざというときのためにも、対処法や解決策はぜひ覚えておきましょう。

目次
【安全第一!】冠水した道路には絶対に入らない
鉄則として、冠水している道路には絶対に入らないようにしてください。特に高架下やガード下、立体交差点のアンダーパスなど、周囲より道路の高さが低くなっている場所は避け、迂回を徹底してください。
ゲリラ豪雨に遭ってしまうと、予想以上のスピードで冠水が進んでいくことが多いです。車が故障するだけでなく、車から抜け出せずに重大な事故に繋がったり、命に危険が及んだりしてしまいます。
また、水がひいて走行できる道路状況になったとしても、浸水による電気系統のショートなどが原因で車の部品が発火や爆発を起こしたり、ブレーキが効かなくなってしまったりします。
車は冠水・浸水に弱い
車は、ある程度の冠水・浸水には対応できるような設計がされているものの、機械であるため水には弱い構造をしています。
ボルト穴やマフラーなどからエンジン内部に水が入ると、エンジンが壊れてしまうケースも少なくありません(ウォーターハンマー)。
エンジンはガソリンと空気の混合気を圧縮し点火することで回転します。
圧縮することができない水がシリンダーに入ってしまうと、ピストンが圧縮しきれずピストンの動きを回転軸に伝えるコンロッドが曲がり、壊れてしまうのです。
また、エンジンルームや室内には電気系統の配線が集中しているため、水の侵入によって誤作動がおきたり、回路がショートしたりしてエンジンが停止してしまう確率が高くなります。
洪水などで道路にあふれた水は、雨水だけではなく、下水の汚水が多く含まれています。
津波による冠水・浸水被害に遭った場合、海水に含まれる塩分によって金属部分の腐食が進んでしまい、車に大きなダメージを与えてしまいます。
どうしても冠水した道路を走行しなければならない場合
やむを得ず冠水した道路を走行しなければならない場合は、ATやCVTを低速域の設定にして、エンジン回転を高くした状態でゆっくり運転をしてください。
排気口の浸水をできるだけ防ぐほか、排気ガスの排出を促進させることで、車に対するリスクを低減させましょう。
車が冠水・水没したときの脱出方法

万が一、車が冠水してしまったり水没してしまったりした時は、落ち着いた行動を心がけてください。焦って行動してしまうと、より命に危険が及ぶ可能性が高くなります。
①シートベルトを外して速やかにエンジンを切る
冠水している道路で車が動かなくなってしまったら、速やかにシートベルトを外し、エンジンを切ってください。
②仰向けの状態でサイドウィンドウから脱出する
水圧は非常に強い抵抗力があるため、水圧でドアが開かなくなってしまう場合があります。具体的には、0.6mほどの水没でドアが開かなくなる可能性が高くなります。
車から脱出する際は、仰向けの状態になり、背中側から外へ脱出してください。
【ウインドウの高さまで水が到達していない場合】
ウィンドウの高さまで水が到達していない場合、ドアからの脱出を試みようとしがちです。
しかし、ドアを開けてしまうと車内に大量の水が一気に流れ込んできてしまい、命に危険が及ぶ確率が高まってしまいます。
水位がウィンドウ部分まで及んでいなくても、サイドウィンドウからの脱出を図ってください。
【ウインドウの高さまで水が到達している場合】
水位がウィンドウ部分まで到達していて窓が開かない場合は、脱出用のハンマーや先端のとがった丈夫なものでサイドガラスを割り、車から避難しましょう。
もし、ハンマーがなく窓を割ることができない場合、ヘッドレスト(頭をもたれ掛ける部分)を外し、柄の部分をサイドガラスと扉の間に差し込んで、力いっぱいガラスを割るようにしてください。
割ったガラスで怪我をしないよう、手や顔にタオルを巻いて行うのが理想的ですが、まずは命を最優先に動きましょう。
避難時は冠水路の水深を測りながら
車から脱出した後、いきなり冠水路に出てしまうと、水深が思いのほか深かったり、マンホールの蓋が外れている箇所に足をついてしまう可能性があります。
まずは足先で水深を測りながらゆっくり足をつき、着地点の安全性を確かめてください。
冠水路を辿る際にも、水の底に何があるかわからないので、ゆっくり確認しながら足を進めてください。
水が引いた後の車の取り扱い方
冠水・浸水してしまった車は、外見上問題がなさそうでも、エンジンのウォーターハンマーや電気系統のショートによる出火や爆発など車両火災の危険があります。
- 自分でエンジンをかけない。
- 速やかにJAFや自動車保険のロードサービス、自動車販売店、整備工場などに連絡する。
- ハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)は高電圧のバッテリーを搭載しているので、できる限り触らない。
- 発火の危険を避けるため、バッテリーのマイナス側のターミナルを外し、外したターミナルがバッテリーと接触しないようにテープなどで覆う。
冠水した道路を自力で抜けられた場合でも、すみやかに修理・整備工場へ持ち込んで点検を行ってください。
破損の状況が軽ければ、修理した上で乗り続けることができますが、汚損や破損が酷い場合は売却、あるいは廃車になります。
加入している車両保険の条件で修理、全損など、扱いを相談しながら判断することになります。
冠水・水没した場合の車両保険適用について
【車両保険が適用されるケース】
- 台風
- ゲリラ豪雨
- 洪水
- 高潮による被害
以上の被害の場合は、一般的な車両保険で補償されます。修理費用が保険の金額を超える、エンジンまで水没して修理が不可能な場合は、全損扱いになります。
修理してもらう際、加入している保険会社へ相談してみてください。
【車両保険が適用されないケース】
- 地震や噴火が原因の津波
地震などによる津波で車が冠水しても、基本的には車両保険では補償されません。
ただし保険会社によっては、地震特約をオプションとして付けられる場合があります。
海岸沿いの近くに住んでいるなど、津波の被害が考えられる場合は、地震特約を付けるかどうか検討してみましょう。
冠水・水没状態のままの走行は絶対NG!
冠水・水没状態のままでの走行は、エンストが起きてしまう危険性が非常に高いです。
エンストとは、エンジン・ストールの略で、エンジンが止まり、車の走行ができなくなってしまう現象のことを指します。
エンジンストール(エンスト)については、以下の記事で詳しく解説しています!
ではなぜ、冠水・水没時にエンストが起きてしまうのでしょうか?その理由についてご紹介していきます。
空気の取り入れ口の水詰まり
冠水・水没時にエンストが起こる原因の一つとして、吸気ダクトやエアクリーナーで水詰まりが起きてしまっていることが考えられます。
エンジンを動かすには、ガソリンの他に「空気」が非常に重要な役割を果たします。空気の取り入れ口が、冠水・浸水によって詰まってしまい、エンストを起こしてしまいます。
排気ガス詰まり
空気とガソリンによってエネルギーを作り出した後、エンジンから「排気ガス」と呼ばれるものが排出されます。
この排気ガスは通常、排気管やマフラーから排出されるのですが、この部分が冠水・浸水してしまったら排気ガスが溜まってしまい、エンストを起こします。
電気機器のショートにより、停止制御作動が起きる
エンジンの周りにある電気機器のショートにより、エンジン制御システムが作動し、緊急停止が行われます。
感電事故を防ぐために、エンジンが作動しなくなります。
主なエンストの原因は上記で述べた、空気の入れ口の詰まりや排気ガスの詰まりになります。また、水位が高い場合は、電気機器のショートによりエンストが起きる可能性があります。
最後に
水害が起きた際には、「冠水した道路を走行しない」「身の安全を第一に行動する」ことが大切です。
また、もし水が引いた後に車を引き揚げる場合、自分で運転・処理をするのではなく、ロードサービスなどのレッカー車などを利用して運ぶようにしてください。無理に動かしてしまうと感電事故を起こす恐れがあるからです。
また、車をレッカー車で運ぶ際には、保険会社への連絡を忘れないようにしてください。

この記事の監修者
DUKS 府中店 営業事務
吹浦 翔太
業務歴12年、現場での職務経験6年を経て今はお客様窓口の受注業務を担当しています。
現場で培った経験を活かしお客様に最善な修理をご案内しております。