駐車場で事故を起こした場合の対処法|過失割合・予防策も解説

交通事故総合分析センターの発表によると、平成28年の駐車場等で起きた事故発生件数は18,766件になります。
参考:https://www.tmpc.or.jp/Portals/0/images/03_business/business/index_01/h30_2_g.pdf
駐車場での事故は、夜間よりも昼間に起こりやすい傾向にあります。スーパーや飲食店など、駐車台数が多くなる休日の駐車場は、特に気を付ける必要があります。
場所によっては密室状態の立体駐車場もあり、事故が起きた場合は人も少なく、どう対処して良いのか分からない人もいるでしょう。
駐車場で交通事故を起こした、もしくは巻き込まれた場合はどう対処すれば良いのか…詳しく解説します。
目次
駐車場の事故は警察に届けるべき
駐車場事故は、基本的には警察に連絡しましょう。駐車場は公道ではなく私有地ですが、不特定多数の人が利用するため、道路交通法(交通事故)の対象となる場合が多いです。
道路交通法第72条に則り、公道での事故と同様に警察への通報義務が発生します。また、警察に届け出をしていない事故は交通事故証明書が発行されません。交通事故証明書が発行されないと、保険が適用されないケースがあるので駐車場内でも事故をしてしまった場合は必ず警察に連絡しましょう。
駐車場事故の扱い
交通事故扱い(道路交通法の適用)になるかどうかは「不特定多数の人が自由に行き来できる場所か」が大きな基準になります。
交通事故扱いになる駐車場
不特定多数の人が自由に行き来できる駐車場は、主に以下の場所が考えられます。
- スーパー
- ショッピングモール
- ホームセンター
- コンビニ
- ドラッグストア
- サービスエリア
- パーキングエリア
以上の駐車場は、道路交通法の対象となると考えて良いでしょう。民家や月極駐車場などの場合は、通行が制限されているため交通事故として扱われる可能性は低いです。
ただし「不特定多数の人が自由に行き来できる場所か」の判断は、場所によって難しいケースもあります。
民家や月極駐車場で事故を起こした場合も、警察に連絡するようにしましょう。
交通事故扱いでなくとも法令上の責任はある
例え交通事故扱いにならない場合でも、加害者は民法709条に定められている不法行為責任を負います。
交通事故として扱われない場合でも、物損事故の場合は賠償責任が発生します。
また、人身事故の場合は場所がどこであれ自動車運転過失傷害罪の対象です。人身事故の加害者は、自動車損害賠償保障法3条に定められている運行共有者責任を負う必要があります。
自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によって他人の生命又は身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかったこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。
駐車場で事故を起こしたときの対処方法
駐車場で交通事故を起こした場合、警察・保険会社へ連絡するのはご理解いただけたと思います。ここでは、自分が事故を起こした場合の対処法について、詳細に解説します。
負傷者の救護
駐車場で人を撥ねたり、車同士の事故で負傷者がいたりした場合は、何よりもまず負傷者の救護を優先してください。
負傷者に意識がなく、スーパーや飲食店などで人がいる場合は、AEDを持ってくるよう呼び掛けてください。ご自身はAEDが到着するまでは、負傷者の反応を見ながら心肺蘇生をしてください。
応急救護処置については、以下の記事でも詳しく解説しています。
警察へ連絡する(負傷者がいる場合は救急車も)
負傷者がいない場合は、まず警察に連絡します。警察へ報告する内容は以下の通りです。
- 事故が発生した日時と場所
- 現場の状況
- 負傷者の数
- 物損状況
- 事故対応の内容
負傷者が出て周りに人がいる場合は、応急救護処置をしながら周囲の人へ、警察・消防に連絡してもらうようにしてください。
保険会社へ連絡
警察への連絡が終わったら、加入している保険会社へ連絡しましょう。これは、当事者同士よりも保険会社を通じてやり取りした方が、事故後の処理がスムーズにいくためです。
そのため、相手が示談を持ち掛けてきたとしても、その場で示談に応じてはいけません。自分が加害者・被害者どちらの場合も、必ず保険会社へと連絡してください。
また、自分がパニック状態になっている可能性もあります。オペレーターと話すことで、自分の気持ちを一旦落ち着かせるようにしましょう。
その後の事故状況の確認は、保険会社に相談しながら行うとスムーズにできます。
基本的には、公道で起きた場合の交通事故と対処は一緒です。交通事故の対処法については、以下の記事でも詳しく解説しています。
駐車場で起こる事故の種類
接触事故
いわゆる「車と車」「車と物」「車と歩行者」など、駐車場内では接触事故が起きやすいです。駐車場内に車が出入りするときに、駐車中の車やフェンスなどへの接触事故が多発しています。
これは、駐車場内では死角が多いことが原因です。特に立体駐車場では柱に隠れた歩行者に気付きにくく、飛び出してくる歩行者とぶつかる場合があります。
駐車場の出入り口にいる警備員に気付かず、加速してぶつかる場合もあるので注意が必要です。
当て逃げ事故
前述の接触事故を起こしても、警察に届けない当て逃げ事故も駐車場では発生しています。
立体駐車場などは人気もなく、駐車中の車はドライバーが不在のため、そのまま逃げてしまう加害者もいます。
ちなみに、道路交通法が適用される駐車場で当て逃げをすると、以下の刑罰の対象になります。
- 一発で免停になる
- 危険防止措置義務違反(1年以下の懲役または10万円以下の罰金)
- 警察への通報義務違反(3か月以下の懲役または5万円以下の罰金)
機械式立体駐車場での事故
機械式立体駐車場での事故も起きています。人が機械に挟まれて、怪我をしたり亡くなったりしている人もいるので注意が必要です。
中には子供を乗せたまま入庫して、機械に挟まれてしまった事例もあるので、不注意では済みません。
過失割合について
駐車場で物損以外の接触事故の内容は、以下のパターンがあります。
- 走行中の車同士の出合い頭事故
- 「走行中の車」と「駐停車する車」の事故
- 「走行中の車」と「出庫する車」の事故
- 車と歩行者の事故
それぞれの過失割合は、以下の表の通りです。
【表1:駐車場内の接触事故の過失割合】
事故のパターン | 状況 | 過失割合 |
走行中の車同士の出合い頭事故 | 主に交差点での出合い頭事故。 | 直進・右左折問わずに、過失割合は50:50 |
「走行中の車」と「駐停車する車」の事故 | 通路を走行する車が、駐車スペースへと駐停車する車に衝突した場合の事故。 | 通路を走行する車:80駐停車する車:20 |
「走行中の車」と「出庫する車」の事故 | 駐車スペースから出庫する車が、通路を走行する車に衝突した場合の事故。 | 通路を走行する車:30出庫する車:70 |
車と歩行者の事故 | 通路を走行する車が、歩行者に衝突した場合の事故。また、駐車スペース内にいる歩行者に、車が衝突した場合の事故。 | 車:90歩行者:10 |
※これらの過失割合は、あくまでも目安です。実際は事故の状況で変わる場合があります。
自分が被害に遭った場合の対処法
事故の状況は、被害者の過失割合に大きく影響するため、請求できる賠償金にも及びます。
もし自分が被害に遭った場合は、正当な賠償金を請求できるよう、以下の対策をして証拠を残すようにしてください。
- スマホやドライブレコーダーで状況を録画して残しておく
- 目撃者がいれば証人になってもらう
- 加害者との会話を録音する
- 録音・録画した証拠を元に状況をメモしておく
- 病院で医師の診断を受けて診断書をもらう
駐車場での事故を防ぐ運転
サポカー等の安全技術により、現在では車も駐停車しやすくなりました。とはいえ、油断は禁物です。駐停車での操作は以下のことを心掛けて、事故を起こさないようにしましょう。
駐停車するとき
駐停車するときは、基本的にバックで後退する場合が多いですよね。バックで駐停車するときは、ハザードランプを点けて一旦停止しましょう。
また、後退して駐車する前に、駐車スペース内の安全確認をしっかりと行ってください。そして、ハンドルとペダルの操作をあわてず一つ一つゆっくりと行いましょう。
足はブレーキに乗せた状態で、ゆっくりと後退します。
出庫するとき
車を出庫する際は、まず車の先頭を少し出して一時停止します。それにより目視できる範囲が広がるので、走行している車や歩行者がいないか、しっかりと確認してからゆっくりと出庫しましょう。
また、車の先頭部分を少し出すことで、近くで走行している車や歩行者に、自分が出庫しようとしていることを知らせることができます。
駐車場内を走行するとき
駐車場内では自分の前を走行している車が、駐車するため急停車したり後退したりします。また、駐車スペースの車に隠れて、歩行者が急に飛び出てくる場合もあります。
そのため、駐車場内を走行するときは、10km以下の徐行運転を心掛けてください。また、近くに歩行者がいる場合は、すぐに止まれるよう3~4kmまで速度を落としましょう。
最後に
駐車場内で事故を起こした場合も、基本的には公道で事故を起こした場合の対処と変わりません。負傷者がいる場合は、まずは応急救護処置をしてください。
また、基本的には当事者同士での解決になりますが、明らかに個人的な私有地での事故以外は警察に連絡するようにしましょう。
加害者・被害者どちらの場合も保険会社に連絡して、被害に遭った場合はスマホで録画するなど事故状況を記録するようにしてください。
年末年始やゴールデンウィーク、お盆など大型連休は普段訪れない場所に出かけ、慣れない土地や駐車場に行く機会も増えます。そういった時にはしっかり安全確認をしてから駐車するようにしましょう。